下書きで保留されていた記事。この稿を投ずる時点で「おすすめの本」は何週間前の話題か分からないが気にしない。
タイトルの「検索エンジンはなぜ見つけるのか」を見た時点で「コンピュータはなぜ動くのか、プログラムはなぜ動くのかと言ったヒット本の2匹目3匹目のどじょうを狙った書物で、読んでも大して面白くないだろう」と敬遠する感覚は大体正しい。
でもこの本に関しては意外と、後半が特に面白い。後半には「検索エンジンはなぜ見つけられないのか?」がとうとうと書いてあり、恐らく筆者のかたの言いたかったことは・そっち(後半)の内容なのだろうと思う。
要約することで筆者のかたの言いたかったこととニュアンスが変わってしまうだろうけれども、次のような感じ。
- 検索エンジンはユーザーの期待に従って、手軽に素早く検索結果を提示することに特化した
- この方向性の特化の結果として、情報要求の種類によってはあまり役に立たない検索結果しか提示出来なくなった
- この特化の方向性は、今後もそう変わらないだろう。直接的なユーザの期待もそうだし、検索エンジンを運営する企業等としては(本来あるべき方向にユーザーを教化するよりも)直接的なユーザの期待に応えるサービスを提供するほうが目先の利益に繋がるだろうから
- それに比べると、訓練をつんだ司書様に書籍を探して貰うプロセスは、情報要求の段階の広い範囲を的確にカバーしている
この筆者さんの纏めかたの素晴らしいところは、検索エンジンはダメダメで生身の人間の司書様は素晴らしいと言う結論は直接的には一言も書いていない*1点だと思う。本当は直接的にそう書いてあるほうが読者としては楽なのだけれども、その「答え」を性急に文字にして読者に楽をさせては(この本が)現代の検索エンジンのダメなところと同じになってしまう…と言う思いからかも知れないし、「検索エンジンはなぜ見つけるのか」と言うタイトルの手前書きづらかったからかも知れない。
はてなの人力検索も、手軽に素早く結果を提示する方向に特化し過ぎたのが面白みが減った理由だろうと思う。ヒトの発言を不用意に切り取るとニュアンスが変わることもあるだろうけれども、以前に質問の自動延長機能をもう要らないと判断を下したときの理由としてはてなの社長が言っていたのは「だらだらやっていて何が面白いのか」と言う趣旨だったような気がする*2。その時の印象がキチョーにとっては強かったからなのか、人力検索の変更は質問者が楽をして手軽に素早く結果を得られる方向に向かって行ったと感じている。少なくとも質問者にとっては、楽をした代わりに当たり前な回答しか得られなくなった気がする。
最後に一言、書籍の感想に戻す。この本を読んで、司書様になりたかった夢を持ったことがあったのを思い出した。
- 作者: 森大二郎
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/03/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 8人 クリック: 1,195回
- この商品を含むブログ (27件) を見る