「過労死」と言う字面

 この字面が、この言葉が造られた頃に、この現象をどのように理解していたかの痕跡を残しているのだと気がついた。
 労使の立場を逆にして綴ると、語呂は悪いが、この現象を「過使殺」と綴ることが出来る。201x年の我が国の風潮では働き過ぎで死んでしまうほど思い詰めるとは「死んだ奴が悪い」とは公言しないから、どちらかと言えば「過使殺」の字面のほうが現代の善良な市民の現象理解に近いだろう。
 語呂が良さそうな別な綴りを探せば「酷使殺」辺りだが、実際の現象はこの字面よりも陰湿なもののような気もするし、誰かが悪いと特定するよりは「害」や「災」で締め括るようなマイルドな字面が最終的には万人に好まれるのではないか?と言う予感もする。
 20〜30年後の新聞か何かで、過労死の代わりにどんな字面が使われているものか楽しみ。その頃までは生きていて、過労死とは無縁の地位(隠居?)に就いている想定。
──駅で「過労死ゼロを目指して」と言ったようなスローガンのポスターを見て感じた違和感からの記事。